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ガリレオ 最終回 「聖女の救済」 感想 [ガリレオ]

ガリレオ 最終回「聖女の救済」の感想(あらすじネタバレ含む)です
最終回にふさわしく極めて「完全犯罪」に近い鉄壁のトリックでしたね
今回のテーマはやっぱり「1年」という時間なんでしょう
1年越しのトリックが犯行の証拠を希薄にしてしまいましたからね
その1年間の「執念」もすごいものがありましたが


この2週連続最終章のゲスト・真柴(旧姓・三田)綾音(天海祐希)は敬虔なカトリック信徒であり、
その流れからか幼児教育の方向へ進み幼児教育施設「ひまわり会」の代表を務めている人物です
そして彼女は湯川学(福山雅治)の中学時代の同級生であり、
常にモテモテ勝ち組人生を歩み続けてきやがった湯川は当然中学でもモテモテで、
敬虔なクリスチャンである彼女にとっての清い清い初恋の相手も湯川であった因縁がある


綾音は生涯を主・イエスキリストに捧げたのか40歳を過ぎるまで独身を貫いてきたが、
田園調布の豪邸(中古だけど)を購入できるほどの収入がある会社の社長・真柴義之(堀部圭亮)と結婚する
しかし真柴は結婚相手に求めているものは「出産」のみであった
確かに愛情が全くなかったとは言えないし寧ろ優しいしDVもしないししかも金持ちで良い夫なのかもしれない
だが根本の部分の「愛情」が全くなく、単に女性を「産む機械」と見なして接触している人物である


この真柴は親のいないみなしご出身のようで、
これまで仕事一筋だった人生にだったものの、
急に自分の(優秀だと自負しているであろう)遺伝子を残したいというdesire(強い願望)に駆られるようになる
演じる堀部圭亮がイケメンかどうかはK2時代を見ていたボクにとっては微妙ではあるものの、
この真柴はかな~り「女性馴れ」していたフシはあるだろう


現に綾音と交際中に同時進行で別の美女・津久井潤子(相沢直美)とも交際していた
随分アットホームな会社のようで代表取締役社長が社員達に「ボクの彼女なんだ」と紹介までしたほどらしい
しかも社員にはKARAのメンバーのク・ハラまでいる(笑)
金持ちというだけでモテる要素は高いが、さらにイケメンの部類に入る(?)であろう真柴のこと
綾音との会話や接し方なども女性慣れしているしかなりの「女たらし」だったのは想像に難くない
と、言うより“独身貴族”とやらを謳歌して自由奔放な恋愛を楽しんでいたが、
40を過ぎて急に子孫を残したくなって焦りだしたという形にも見える


一方の綾音だ
日本ではクリスチャンは本当に少ない上にカトリック信徒となると尚更少ないからわかりにくいかもしれないが、
基本的にカトリック信徒は「婚前交渉」は禁じられている
「救済」に対する固執などどう見ても信仰心の強いタイプの綾音もその厳しい戒律は守っていただろう
そもそもこの前後編のサブタイトルでも「聖女」と称されている
これだけでもかなり彼女の性格やそれまでの生き様を表現しているものと考えられる
つまり綾音は初恋の湯川との恋も実らず、40過ぎるまで恋愛をしていなかった可能性も充分ある


とは言えこの2人は「できちゃった結婚」である
つまり「聖女」であるはずの綾音は「婚前交渉」をしたことになる
ここなんだが、おそらく真柴は既に結婚の約束を口にしていたのだと思う
それがなければ40年以上守り続けた純潔を聖女・綾音が簡単に捧げるとも考えにくい
もちろん綾音がそれまでも恋愛経験がある人生を歩んできた可能性もなくはないが、
やはり描写からかなりクリスチャンとしての主・イエスキリストへの忠誠心は高いと考えられ、
既に「男」を知っていて恋の酸いも甘いもかみ分けた40代女性と考えるのはさすがに無理がある


恋愛を全く知らなかったウブな40過ぎの敬虔なカトリック信徒の女の子が、
女慣れしたプレイボーイ社長に甘いマスク(か?)と甘い言葉で囁かれ口説かれたら恋に落ちるのは一瞬だろう
そして「必ず結婚するから」的な事を言われ丸め込まれ騙されてた敬虔なカトリック信徒の綾音は、
バージンロード(そもそも結婚式は挙げなかったが)を歩く前に「プチ・戒律破り」をしてしまい、
その結果「できちゃった」流れだったのではないかと思う


今時珍しいほどの献身的に夫に尽くす綾音の姿はクリスチャンの女性としてのものという考えもできるが、
40を過ぎて初めて愛を知った女性のそれでもあったのだと思う
遊び慣れた男だったら「そーゆーの重い」と言いかねないほどの真摯な愛を綾音は夫に捧げていたのである
嫌いなバラを「真柴が好きだから」と受け入れようとする姿勢にも出ている
「相手の好きな物は自分も好きになる」という感情はその恋に盲目的になった女性にありがちなものでもある


それがある時「単に子供を産ませるための結婚」であったことを知ることになる
真柴を心から信じ、愛し、「プチ・戒律破り」までして40年以上守り続けた純潔を捧げた結果がこれである
強すぎる愛情が裏切られた時、それは一気に「強すぎる憎悪」に変貌する
人間感情は物理の世界で良く使う振り子に例えると「振り幅」が大きければ大きいほど影響が大きい
今回の事件はその心理状態が背景にあったと想像できる


40過ぎて始めて愛を知った綾音の「振り子」は真柴への愛で完全にプラス側に振り切っていた
しかしそれは口の上手い真柴に騙され利用されていたのだと知り一気にマイナスのピークへ大きく振れたのだ
これが愛のない夫婦で元々愛情の「振り子」がニュートラルに近い位置か、
ヘタしたらマイナスの位置にあったら例え裏切られたって動く振り幅は小さいから元々の感情から大した変化はないだろう


感情の振り幅の大きさとはそれほど人間の心に与える影響は絶大なのである
例えば恋人の誕生日にプレゼントを渡す際に、
最初から「今日は誕生日だからプレゼント渡すね渡すね」と言いながらそのまま渡すのと、
誕生日であるコトを全く口にせず当日のデート中も「もしかしたら私の誕生日忘れちゃってるのかな」と相手を心配させ、溜めに溜めて誕生日のデートの別れ際に「誕生日おめでとう、ハニー?」と渡すプレゼント
どっちが相手に与える感動が大きいかは説明しなくてもわかるべ?
一度相手に「誕生日忘れちゃったのかな?」と心配させ感情の振り子をマイナスのMAX地点まで振り切らせる
そして溜めに溜めてデートの別れ際にプレゼントをドンと渡すことで、それまでマイナスに傾いていた感情が一気にプラスのピークに振り切って大きな感動となる


“サプライズプレゼント”が喜ばれるのもこの理屈である
まさかプレゼントをもらえると予想などしていなかったところに突然渡されるプレゼント
その喜びで感情の振り子は大きくプラスにふれてそれは大きな感動へと昇華するのである


逆に「ぬか喜び」という言葉もある
友達の宝くじの当然番号を1桁間違えて確認し「おい!一等当選してるぞコノヤロー!」と伝える早とちり君
その持ち主は「え?マジで?マジで?」と大喜び
よく調べもせずにそのバカの言葉を鵜呑みにしてしまいその当選金で何をするかあれこれ夢を語り合う二人・・・
その夜は銀座か六本木で2人で豪遊しそのまま部屋に戻り眠りにつく・・・
そして翌朝目を覚まし改めてまじまじとそのクジを見る
当選番号と見比べると・・・良く見ると1桁違いで外れている事に気がつく!
完全に「早とちり君」の勘違いだと気づき、それまでプラスのピーク(メイド・イン・ヘブン)に振り切っていた感情の振り子が一気にマイナスのピーク(ゴー・トゥ・ヘル)に振り切って壮絶なショックとなりヘタすれば寝込んでしまうか体を壊してしまうかもしれないだろう
それどころか信用していたその「早とちり君」に対し憎悪を抱くようになるかもしれない


サッカーや野球の試合を見ていても「感情の振り幅」が精神に影響する事は多い
贔屓チームに序盤で大量点が入りその後全く危なげなく終わる試合より、
ずっと劣勢だった試合がロスタイムや9回裏の大逆転での勝利ではどっちの勝利の喜びが大きいだろうか?


逆に贔屓チームが序盤で大量点を奪われそのままずっと劣勢のまま負ける試合と、
贔屓チームが序盤大量点を得て常に優勢で勝利目前と思われたロスタイムや最終回に大逆転負けする試合
どっちがファンとして精神的に答えるか・・・?


「もうこの試合は負けだな」と絶望的な気持ちで見ていた試合が最後に大逆転で勝つ事で得られる感動はサッカーや野球が好きなファンなら何度か経験があるだろう
その夜はもうテンション上がってしょうがないはず
逆に「この試合はもう勝ったも同然だ」と悠然と見ていた試合が、最後に大逆転をくらって負けたときの壮絶な絶望感も同様に経験があるファンも多いだろう


つまり、直前までの感情と真逆の現象(現実)が発生する事で、
人間の精神は良くも悪くも大きく動揺する事になるということである
感情という名の振り子の振り幅が大きければ大きいほど人間の精神は大きく動揺する
これが「感情の振り子理論」である
これは物理学ではなく心理学の分野の話ではあるが・・・物理の世界でも振り子は実験でよく使うからね


聖母マリアの処女懐妊からもわかるがカトリックの女性は結婚するまで「純潔」を守ることを重視する
40過ぎまで結婚しなかった綾音は過去にプラトニックな交際はあったかもしれない
しかし結婚していなかった以上ほとんど「男」を知らないまま今回の結婚に至った可能性が高い
厳密には初恋の相手は湯川だったにしても、初恋の相手と結婚する15才の少女と状況はほぼ同じである
「初めての恋愛」に盲目的になり、本気で愛していた真柴に裏切られた衝撃はそれは大きいものだっただろう


単純に「子供を産んでもらうために結婚する。もし産めなかったら別れるから」などというまるで戦国時代の世継ぎを求める大名みたいな発想を持った真柴は言うまでもなく最低野郎だが、
綾音の殺意の強さや執念も相当常軌を逸している
逆に綾音とのある意味「妊娠競争」に負ける形になった津久井潤子は真柴に殺意を抱くのとは対照的に人生に絶望をしてしまい自ら命を絶ってしまっている


そう考えると綾音も潤子も真柴の強すぎるエゴに対する犠牲者とも言えるし不幸な面もある
そもそも綾音はあの自転車追突事故さえなけえばそのまま幸せな人生を過ごせたのである
そう考えるとますますいたたまれない気持ちにもなるが・・・


そもそもあの自転車の事故は湯川の「仮説」では偶然の事故だったと片付けられた
しかし放送中に再三流された映像では自転車はライトも点灯しているし、
女性はケータイをいじりながら自転車を運転しているわけでもない
そもそも明らかに綾音の方向へ舵を切って突進して、
そして何の同様もなく逃走していく明らかな「確信犯」としての映像だ


あの映像は元々は綾音の同僚である若山晴美(山口紗弥加)の被害妄想から派生した「想像シーン」ではあるが、その後も2度流された事を考えると「公式設定」にも思える
もしかしたらあの自転車に乗っていたのは自殺する前の津久井潤子だったのではないだろうか
潤子はどうせ死ぬならせめて憎き綾音に復讐だけして「本懐」を果たしたいとあの犯行に出たのでは?
この「ガリレオ」というドラマは全ての伏線を解決させないドラマだからこの自転車事故の真相は闇のままだが


今回の事件のバックボーンとしてこのオレなりの低俗な仮説を一応ここまで長々と述べてみた
綾音は40過ぎて「初めての恋愛」からいきなり「できちゃった婚」に発展して盛り上がり、
盲目的な愛を真柴に捧げた
しかしそれは真柴にうまいこと騙され結局「産む道具」として利用されていただけのことであり、
しかもそれが「使い捨て」のものであったことを知ってしまったのである


綾音がクリスチャンという立場からの仮定ではあるが、
ただ正直一つ大きな矛盾もある
それは綾音が真柴の愛と1年間の救済を確認する為に、
一度流産してからは避妊治療をしていたことである
カトリックでは婚前交渉だけでなく避妊も禁じている
もちろん人工妊娠中絶(堕胎)など論外だ
カトリック信徒が軽々しく結婚前に性交渉できない理由はそこにもある
つまり女性はピルも服用できないし男性はコンドームも使用禁止なのである
もちろん戒律を破っている信徒もいるだろうが、
綾音はかなり戒律を重んじるタイプであるコトはその他の描写からも明らかである


これに関しては一度「婚前交渉の禁止」の戒律を「彼は絶対結婚するって言ってくれてるんだしもう結婚したようなもんか・・・」と自分に言い聞かせたのかもしれないが、籍を入れる前に破ってしまったことで綾音の心理的タガが外れてしまった事による行動だったのではないかとも考えられる
一度犯罪を起してしまうと人間は犯罪への精神的抑止力を失ってしまうのと同じで、
一度戒律破りをしてしまった綾音は戒律破りへの精神的抵抗を失ったのではないかと


そしてやはり女性としての本能もあったのかもしれない
「愛されたい」という
真柴の愛が本物かどうか確かめたかった
だから綾音は避妊治療を密かにしていたのだと思う
また妊娠してしまえば真柴の本当の気持ちはわからないまま結婚生活を続ける事になるわけだから・・・


もちろん、いくらカトリック信徒だと言っても修道院に入っているほどの信徒でもないわけで、
普通に俗世間の中で生きているんだから、
聖女・綾音がこれまでも派手な交際やりまくりの宝塚系ギャルとして生きてきた可能性もあるかもしれない


それに本当に「聖女」だったら年下に対しても敬語だろうが、
綾音は真柴の部下(年下じゃないかもしれないが)や岸谷にタメ口で接している
これはかなり俗っぽい対応だ
クリスチャンじゃなくても大人には年下でも敬語で接する人間は結構いるわけだから
この辺りは寧ろ真柴綾音という人物よりも演じる「女優・天海祐希」のキャラが出た部分にも思える


そもそもカトリック信徒だからって皆そこまで厳格に戒律を守ってるわけでもない
僕は決してカトリックに対する偏見を持ってるわけでもない
寧ろカトリックにもプロテスタントにも友人はいるし
カトリック信徒だって派手に楽しく生きるのは教義的には別として個人的にはあることだろう
日本でも「天使にラブ・ソングを…」か?


ここまで長々とこの事件のバックボーンを自分なりに仮説として語ってみましたが、
カトリック信徒かどうかを抜きにしても真柴の「妊娠できなかったら切り捨て」結婚は相手に殺意を抱かれても仕方のない発想であり、綾音がそれまで別の男性とも恋愛経験があったとしても結局は同じ行動に至ったかもしれないし、その辺はもう「視聴者のご想像にお任せします」ということなんでしょうね
そもそも真柴は綾音が身体を許してくれるまではあれこれと良いことを言っていても、
結局綾音が妊娠しなければ結婚は絶対しなかったでしょうし、
どうしても「お世継ぎ」がほしい真柴にとって結婚するなら「できちゃった結婚」以外の選択肢はなかったのです


綾音のあのルックスでそれまで全然誘われたり告られたりなどがなかったとも考えにくい
ずっと教会や子供相手の仕事で出会いがなかったのかもしれないけど、
それなら真柴ともどこで知り合ったのかという話にもなるし
とにかくそれくらい今回の綾音・・・つまり天海祐希は美しかった
これまではどっちかと言うと「カッコいい」タイプだったけどこのドラマはその美しさをこれでもかと出していた


ただ、化学や薬学の知識がないと思われる綾音がどうやってヒ素の情報や致死量の目安、そして入手を可能にしたのかなど謎もまだまだあるわけで
湯川への思いが強すぎて自分も理科の勉強は一生懸命やって、その結果化学に自分なりの適性を見出したのかもしれませんけどね(笑)
「スイヘイリーベボクノフネ」って感じではあるのかな?(゜o゜)


結局事件の流れとしては正しいかどうかわからないけど上に長々と述べた過程を経て、
結婚式も挙げず入籍だけ済ませる結婚生活へ突入した二人
しかし結婚のきっかけとなった綾音の妊娠も犯人も真相も闇の中の自転車追突事故で流産
真柴は綾音に1年間の「タイムリミット」を設けてその間に再度妊娠できなきゃ離婚だと告げる
それを受けて綾音は真柴に殺意を抱くがすぐに実行に移さずにこちらも1年間の「タイムリミット」を設ける
「救済」という名の死刑執行までの執行猶予の期間
この1年間で真柴が改心するか綾音への愛を再認識しない限り真柴は命を絶たれる事になるわけである


しかし綾音の願いも虚しく、1年後きっかりにその約束の話を持ち出した真柴
そしてあっさりと悪びれもせず寧ろ微笑をたたえてまで「それじゃ、離婚だ」と言い放った真柴
綾音は一瞬表情が固まったものの、その場はすぐにとりつくろって「そうね。1年間ありがとう」と返す
そしてワインで「死の乾杯」を交わす二人
だが綾音はもうその夜すぐに「処刑準備」に着手したわけである・・・


処刑方法は毒殺
どうやって知識や毒物を入手したかはわからないが、
綾音は既に真柴に「1年以内に妊娠できなければ離婚」を告げられた時から準備をしていた
それは浄水器の浄水側のフィルターにコーヒー一杯分の水量で流れ切るが致死量でもあるヒ素を仕込むこと
「処刑」の1年前から既にこの準備を済ませたのである


そこからがすごい
その後1年間綾音は浄水器の浄水から一滴も水を使わずに通したのである
その為に「ひまわり会」の代表の座を若山晴美に譲り、
自分は完全専業主婦となり常に自宅にいて、
真柴に浄水器の浄水を一切使用させないようタペストリーを作りながら常に「監視」していたのである


真柴がミネラルウォーターしか口に入れない潔癖症の健康マニアだったから良かったものの、
普通だったら浄水器がありながら1年間浄水を一滴も流させないなんてものすごく困難な事だったと思う
ある意味綾音には「毒の浄水」を守り続けるその1年間はとても長く感じたものだろう
しかし一方でその1年間が終わらないでいてほしいという思いもあったんだと思う
少しでも真柴の救済(改心)の時間が長引くように
少しでも真柴の愛情が育まれる時間が長引くように
少しでも愛する真柴の側にいられるように・・・


綾音の思いも虚しく、真柴は平然と離婚を突きつけてきた
その後は妊娠期待度の高い20代前半の女性とでも「できちゃった再婚」するのかもしれない
それこそ身近にいるKARAのク・ハラとでも再婚するかもしれない
そう考えると綾音の心の中には次の若い(であろう)再婚相手への「嫉妬」の部分もあったのかもしれない
それが余計に殺意を強くする
ツヨクツヨク
溢れる殺意


あなたも「なぜ浄水を1年間使用できない不便を強いてまで1年前から毒物をしかけるのかな?」と考えたのでは??
僕も最初は疑問に思った
おそらくこれは完全犯罪の成立と、「救済には時間が必要である」という綾音の精神面から動いた行動だったのだと思う


まず完全犯罪の部分だが、殺す直前に毒物を入手したりフィルターを外したりするとその形跡が残る
すぐに綾音の犯行が露見してしまうリスクが高い
しかし1年前にそれをすることで、その「犯罪の形跡」を時間の流れが消し去ってくれるからである
現にシンク下の浄水器フィルター周辺は埃が積もっていた
それにより鑑識が調べる為にフィルターを外した形跡が埃によってわかっている


毒物の入手だって直前に動けば、事件後に綾音の直前の行動を警察が追えばすぐにそれは露見してしまう
しかし1年前の綾音の行動を洗い出すのは極めて困難だろう
そもそも綾音は表向きは北海道にいて現地の旧友と食事をすることでアリバイまで完璧だ
1年前の行動まで入念に追う可能性は極めて低い
だから綾音の毒物の入手だってほぼ証明不可能な事実である


これらの過程は湯川が綾音を恐竜博物館に連れてきた時に話していたことで想像がつく
「長い時間の経過により、証拠を100%に近いレベルで消し去る」方法を綾音は選んだわけである


そしてもう1つの「救済には時間が必要だ」という考えも大きく影響している
おそらく綾音は形上だけでも1年前に真柴をいつでも殺せる状況を作っておきたかったんだと思う
その上で1年間の「救済期間」を真柴に与え真柴の改心を待った
その為に綾音の精神上こだわりで、既に「殺しのセッティング」が完成してる必要があった
本来ならその場で殺しているところだった
それを1年間「延命」させ、その間真柴が死と隣り合わせの状況にあるという「形」がほしかった
「執行猶予中」の真柴を、1年間死の危険なしで安穏と過ごさせてはいけないという自己満足だったんだろう
「愛には形がないよ」とか言うけど、触れられなければ淋しいもんだよね


そしてアリバイの北海道行きまでの時間稼ぎの為にコーヒー一杯分のミネラルウォーターだけ残し、
2杯目以降は浄水器から水を出さないと飲めないようにして綾音は北海道へ旅立ったわけである
湯川の仮説の中で綾音が真柴の性格から確実に浄水を使う事を理解していたとあったが、
さらに言えば真柴のコーヒーを飲む頻度も熟知していた綾音だからこそできた犯行でもある
ヘビーなコーヒー党は1日に10杯はコーヒーを飲む
真柴がそのペースで飲むタイプだったら綾音が北海道に到着前に2杯目に手をつけていただろう
しかし現実には午前に1杯午後に1杯のペースだったようで
そこまで理解していた綾音だからこそできた完全犯罪(もどき)である


いつもは1人で全て犯行の証明(Q. E. D. )までもっていく湯川だが、
今回は単独では犯行の証明まではできなかった
あくまで「完璧すぎる仮説」を立てるまでが精一杯だった
最後の証明の部分を果たしたのは口では罵っているものの内心認めてもいる岸谷美砂(吉高由里子)だった
完全犯罪に思われた犯行だが綾音の唯一のミスであるヒ素入り浄水の残り水をバラの鉢に撒いたことを発見


これにより鉢の中の土にヒ素が浸透し、バラを何度生け換えても枯れてしまう現象が発生した
実際、撒いている場面で岸谷もその場にいたから他の箇所に水を捨てる事もできない状況だが、
既に岸谷が来る前から鉢に水を撒いていたからやはり綾音の注意不足だったんだろう
ただ、この行動はフィルターやパッキン内部に流れきれず残ったヒ素水を完全に「証拠隠滅」する為のものだったわけで、綾音ほどの人物ならそんなことをすればバラが枯れる事はわかっていたのになぜそんなミスを・・・


思えばバラに関しては本来綾音は「トゲのある花は嫌い」ということだった
しかし真柴が好きな花だからという理由で自宅で栽培していた経緯である
もしかしたらヒ素残り水をバラの蜂に撒いた行動は、
ホントは好きでもないバラを真柴への愛の為に嫌々栽培していた事に対する報復的なものだったとか?
しかしその後もバラに水を与えに2Fへ上がっている際にバラが枯れていない事を不自然に思うはずだし・・・


やっぱりこれは単純なミスだったのかもしれない
そもそも湯川と綾音が中学の同級生だとなぜ岸谷達は知り得たのだろうか
綾音は最初湯川がこの事件に関わった事を驚いていたから話してはいない
これはやはり綾音のアリバイの確認で北海道の友達2人に証言を取った時にたまたま出たのかもしれない
それ以外考えられない・・・
さっぱりわからない
実におもしろい


また、綾音が北海道から戻る前に鑑識が浄水を調べてしまったらどうするつもりだったのか
東京に戻って署に来てもらう事を求めた岸谷達に対しまず家に戻らせてほしいと強く求めてはいたが・・・
その前に調べられてしまっている可能性も充分あったはず
このあたりはかなり「見切り発車」の部分があったようだ
だが結果として証拠隠滅に成功したかに見え完全犯罪は成立すると思われた・・・


しかし、湯川と岸谷の2人によってそれは崩されたのである
「聖女」のわりには最期はちょっと往生際が悪く保身にこだわったフシも見えた綾音
「誰にでも救済される権利はある」という言葉を湯川は綾音に返し、
これにより綾音は素直に罪に服した
ちょっと最後は淡白な終わり方だったが、これも「ガリレオ」らしさではある


最後は早くも次の事件の捜査協力を湯川に持ちかけてくる岸谷
今度は落雷を意図的に誘発しての計画殺人とのこと
これは非常に興味があるからぜひ映像化を期待したい(笑)
湯川も大変興味を示したようで
こんな感じで今回は終わりました

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この最終シリーズは視聴者を惑わす「フェイク」も結構ありましたね
見るからに怪しい紫の傘の女(光浦靖子)はモロに「引っ掛け」だとわかったけど、
綾音が嫌いだったバラだらけの家にしていることや、
いかにも事件に関わって(真柴に手をつけられて)いそうだった意味ありげなキャストの山口紗弥加
彼女を起用しても結局単なる同僚の脇役のまま終わらせてしまいこれは意外だった
てっきり彼女も何か関わってると思ってただけに
深読みしすぎの悪いクセですね・・・


山口紗弥加も光浦靖子もなんか随分久々に見たなぁって印象
どっちも好きな女優さんなんですけどねぇ・・・


そういえば光浦も何らかの宗教団体の信者だったな
そうなると綾音との宗教戦争の要素もあったのか・・・
何系なのかよくわからなかったが・・・
キリスト教系(エホバの証人とか)なのか仏教系なのか
創価学会・霊波の光・・・


そんな素晴らしいガリレオだが視聴率の推移は・・・
1話 22.6%
2話 20.5%
3話 21.1%
4話 20.9%
5話 17.9%
6話 20.4%
7話 19.7%
8話 19.5%
9話 18.4%
10話 18.2%
最終話(11話) 19.1%
全話平均 19.9%


・・・惜しい!
紙一重の差で全話平均20%を割っちまいました/(>o<)\
やっぱり第5話なんですよ
この回だけ大きく数字を落としてるのが響きましたね
確かにこの回はちょっと・・・


まーでも視聴率が全てじゃないというのはこのブログで一貫して言い続けてる事なんで
それに今は「録画視聴率」という目に見えない潜在的視聴率の存在もあります
それは正規のビデオリサーチの視聴率の倍もあったりしますからね
んだからこの「ガリレオ」だって「録画してからじっくり」派の方が多いでしょう
作風からも何度も見直さないと見逃してしまう重要ポイントとかも多いし


とにかく素晴らしいドラマだったと思います
新ヒロインの岸谷美砂を演じた吉高由里子
結構賛否両論あるみたいですが僕は彼女の方が良いと思いました
一度定着した作品でキャスト交代があるとどうしても後任者が叩かれがちになるのは良くあることですし
そのうち彼女でないとガリレオはダメだという流れになるかもしれません
長い長い悠久の時間が全て解決するように
恐竜の臓器も浄水器のフィルターもヒロインの印象度も


天海祐希は昨年の秋ドラマ「結婚しない」でも結婚や出産に悩む役や、
バラを愛し花に囲まれる役やってたから最初の予告見た時からあの時のイメージと被る部分が多かったです
あのドラマはもう女性として「落ち着いて」しまったような役で寂しい思いもありましたが、
このドラマではこんなに美しい天海祐希を見れてまたその魅力を再認識しました
「あの瞬間、執行猶予期間は終わったの」と話す時の怖い表情とかゾクゾクきたしやっぱいい演技でしたね^^


あとはこれもかなり個人的な見解だけど、
もしかしたら湯川も中学時代に“三田”綾音を好きだったんじゃないかなと
中学校の理科室で話している時に「僕は・・・」といいかけたのに綾音が「いいの、興味なかったんでしょ?」と遮ってしまってその後も話し続け湯川が言おうとした「何か」を潰してしまった
その綾音の話が終わると一瞬湯川が意味ありげな寂しげにも見える表情をした


思えば定番ムーブの数式を全て描き終わった後、いつもと違いとても悲しそうな表情をしてたたずんだ湯川
それは彼女の犯行ではないと内心願いながらも「真相」を知ってしまった悲しさなのか
それ以外にも研究室で机を荒々しく叩いたり、とにかく今回の湯川はかなり感情的だった
口癖の「実に面白い」も「そんなデリカシーのない事は言わない」と封印したりいつもと違う事が多すぎる
やっぱり・・・これって・・・そーゆーことだよね??


と、言うわけで、真柴夫妻のバックボーンなどかなり個人的見解だらけの更新になりました
「それは違う」と思う部分もあると思いますが、こんな考えをする奴もいるって感じで見てくだされば幸いです
オレは変態です


以上、ガリレオ 最終回「聖女の救済」の感想(あらすじネタバレ含む)でした
最終回の視聴率は19.1%でした


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コメント 6

YUKA

毒物をなんで1年も前から仕込んでいたのかわからなかったけど
ここを見て納得できました
確かに1年前に仕込んでいれば動かしたのとかわかりにくくなりますよね
ホコリみたいなの溜まってたからずっといじってないってわかるし
すごく参考になりました

そうそう、湯川は確かに綾音の事好きだったんだと思いますよ~
最初の段階から綾音だったから捜査協力を受けたと思いますし
面白いレビューありがとうございました
by YUKA (2013-06-26 12:53) 

ショウ

YUKA様コメントありがとうございます^^
やっぱり湯川は綾音のこと好きだったんでしょうねぇ~
それを一番感じたのが壁に数式を書いて証明終わった後の切なそうな表情なんです
あの時すごく悲しい気持ちだったんだろうなって・・・
見てて切なくなっちまいました(>_<)

ただ、最初写真を見ても三田綾音に気づかなかったのも事実ですし、
真実は視聴者それぞれに解釈できそうですけどね
そもそも中学の同級生なら好きでなくても写真見ても普通に気づきそうだけどなぁ・・・
さすがに小学生まで遡ると難しいかもしれないけど(笑)
by ショウ (2013-06-26 20:58) 

ごくう

レビュー面白かったです!

私は原作を読んでからドラマは録画して、家事の合間に原作の復習の感じで見ていたので細かな描写までは分からなかったんですが、原作では1年前から毒を仕込んだ理由がもっと納得できる形で書かれていたように思うんですよね。
(本もドラマも軽く流して読む(見る)癖があるので、原作の内容もはっきり覚えていないんですが、ドラマを見て1年前から準備する必然性の理由付けがちょっと弱いな、と思いました。本を読んだときはそこは全く引っかからなかったのに。)

でもクリスチャンである綾音の結婚に至るまでの心理とか、すご~く面白かったです。

私の流し読みでは絶対に想像もできない発想でした。

これを機に、本もドラマもじっくり味わってみようかな~と思います。

どうもありがとうございました。
by ごくう (2013-07-19 01:21) 

ショウ

ごくう様コメントありがとうございます^^
ごくう様は原作を読んでらっしゃったんですね^^
原作は僕も部分部分は知ってますが、
しっかり読んでいない為にほぼドラマのみの知識しかありません(^^ゞ
でも原作だと綾音が毒物を入手できた理由とか、
真柴が若山にも手を出していたなど、
ドラマでは描かれなかった部分いろいろありましたよね

クリスチャン・綾音の心理に関しては完全に僕の勝手かつ独断な推測です(笑)
あくまで「そんな可能性もあるのかな」程度に流し読みしておいてください(笑)
こちらこそコメントくださってありがとうございました^^

by ショウ (2013-07-20 00:32) 

ヒゲ

はじめまして_(._.)_
私は、原作支持派で、ドラマ版に関しては、あまり良い印象がありません。
映像化された、ガリレオシリーズの全てが悪いとは思いませんが、今回のは、ちょっと:;
この作品の本質って、津久井潤子、真柴(三田)綾音、若山宏美、この3人の女性たちの繋がりが、ほぼ全てだと思うのですが、その辺が全く、描写されていなくて、薄っぺらな印象で残念でした。
潤子と綾音が親友同士、綾音と宏美が師弟関係であること、綾音がヒ素を入手する際に、ヒ素に込められていたメッセージ等、尺の問題なんですかねぇ。
それらの有無で、全く別物になってしまうと思うんですよね。
容疑者Xも、聖女の救済も、トリックその物より、人間関係を重要視している作品だと思うので。でも映画の容疑者Xは、うるうるきたので、大きな問題はありませんでしたけど^^
周囲にガリレオの話ができる人いなくて、なんとなく、書き込んでしまいました。失礼しました_(._.)_
by ヒゲ (2013-07-27 23:36) 

ショウ

ヒゲ様コメントありがとうございます^^
お気持ち良くわかります
僕もこの記事を投稿した時点ではまだ原作読んでなかったんですが、
原作との違いが結構言われているのを気になり読んでみましたが・・・

これはもう原作とは別物と考えた方が良いレベルですよね(笑)
ヒゲ様の仰る通り3人の女性の人間関係を描いていないのは不自然です
若山宏美には山口紗弥加というキャスティングまで配置しているのに
警察側も原作にいるはずの人物が登場しなかったりいろいろありますよね

何より原作から受ける綾音の印象が天海祐希とは違いますよね
サバサバしていて「強い」キャラを演じることが多い彼女が聖女では・・・
同じ宝塚系の檀れいとか紺野まひるの方がまだシックリきますね
最終回のキャスティングとしては「より大物」を求めた結果なんでしょうが

「ストロベリーナイト」などもそうでしたが、原作からドラマ化するに当たってキャラの設定や性格、そして今回のようにストーリーの設定などを変えてしまうことはやっぱり映像化に際してはどうしても不可避なんでしょうかね・・・
by ショウ (2013-07-28 17:40) 

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