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メイドインジャパン ドラマ 感想 [メイドインジャパン]

テレビ60年記念ドラマ「メイドインジャパン」の感想(あらすじネタバレ含む)です
3週3話に渡り放送されたドラマですが社会派ドラマ好きなオレとしてはとても期待して見ていました
キャスティング的には「豪華」というよりは「実力派」を集めた精鋭陣だなという印象でしたね
日本が今抱えている社会的問題をエグり出す内容です
過去の「ハゲタカ」や「再生の町」や「監査法人」など名作揃いですが日本の財政難がテーマになるものばかり


それだけ日本の経済・財政状況は深刻である事がNHKがドラマで扱うテーマからも感じられます
今回は日本の「ものづくり」を支えてきた架空の企業の倒産危機を扱ったものです
つくづく1950年代~70年代の社会を支えた労働者の方々の努力には頭が下がる思いです
今の日本があるのもその期間に日本社会を支えた労働者の方々の努力のおかげです
そして「日本が元気だった」時代でもあり閉塞感漂う現在からすると光り輝く時代だったように思えます


当時はテレビは1家に1台がやっと
50年代などはテレビ自体が「高根の華」の時代で街頭テレビやテレビ持ちの裕福な家庭に近所の人間が集まって皆で一緒に1つのテレビを注目する時代でした


だけど今は家族の1人1台にテレビがある(ワンセグやネット含め)ようなもので、
テレビ以外の娯楽もゲームやネットやケータイ・スマホなど様々登場し、
「もの」という観点では当時より圧倒的に豊かな時代です


そんな豊かな時代にも関わらず現代に「幸福」というものが見出しにくく、
逆に1台のテレビで家族全員、近所全員が熱狂していたあの時代の方が幸福に満ちてきたと思うのは過去を美化する発想でしょうか


テレビが1家に1台で、他に娯楽と言えばマンガくらいしかなかった時代だから、
子供たちは外で遊び、多くの友達と接し多くの体験を積み豊かに育っていた時代
現代は外で遊ぶことも、遊ぶ場所もなく、どんどん内向的なコミュニケーションになっている


「もの」が豊かでも、「心」は貧しく余裕のない時代になってしまったような気がします
逆に「もの」が豊かでなくても、「心」は前向きでオープンだった時代が高度成長期だったんじゃないかなと
このドラマでは直接描かれていない部分ですがそんなことを感じてしまうストーリーでした


ドラマとしては1話、2話はかなり緊迫した緊張感が保たれていた内容でしたが、
最終話となる3話で話数の少なさからか唐突に緊張感が崩れてしまう展開でしたね


あれだけ頑なな姿勢を示していた迫田(高橋克実)があっさり白旗を挙げたり、
あっさり矢作(唐沢寿明)に心を開いたり・・・
そして中国に戻った迫田をあっさり許した現地の中国人労働者達など・・・
ちょっと「掘り下げ不足」な唐突な展開でそれまでの緊張感が一気に瓦解してしまった感がありました
それは息子である翔一(金井勇太)の記者質問がそうささせたのかはわからないですが


そもそも迫田は現実だったら大変な状況に追い込まれるでしょう
労働者達はともかくライシェとしては会社的に「裏切り」をされ多大な損失も招いたわけで
その辺りもほとんど描かれなかったのはさすがに不自然だったかな・・・


翔一もあれだけ怨恨を抱いていた矢作に対して怪我をさせてしまった申し訳なさなのか、
途端に「手を緩め」てしまった経緯が描かれなかったからやはりこれも唐突な感じでしたね
1話2話の様子じゃとてもじゃないけど簡単に収まりそうもない感情に見えましたが


娘の真紀(刈谷友衣子)が翔一の正体に実は気づいていて接していたことや、
父と母の苦悩まで見抜いていたのは驚きでしたね
「私もう大人よ」と言う真紀だけど本当におそろしく精神的に発達している女子高生だと思いました(笑)
この刈谷友衣子という女優さんはすごく演技上手だなと思いました
実際の彼女はまだ高1なのにすごく大人びてるし「セリフのない演技」の表現力がすごいなぁ


翔一が真紀に近づいた理由も矢作のスケジュールを探る為だけだったのか・・・
他に何か意味があったのかグレーゾーンでしたね
1話では電話の会話だけでしたが真紀にデートを求めたりどこかのエロオヤジを想像させるような演出でしたからね


西山を演じた國村隼と妻の美雪を演じた(キムラ緑子)は「ストロベリーナイト アフター・ザ・インビジブルレイン」で夫婦役を演じたばかりでそのまままた夫婦役を共演
このキムラ緑子という女優さんは阿南健治ともそうですが、特定の俳優さんと何度も共演する事が多いですね
でも理由を聞かず黙って30万円を貸す所など、「良き妻」として好演が光りました
西山も再建戦略室の中心メンバーとしてとても光る存在でした


再建戦略室のもう1人のキーパーソンである柿沼(吉岡秀隆)は、
正直矢作との対立もありあまり目立った活躍もなかったですが、
吉岡秀隆の言葉では表せられない存在感がとても印象的でした


「男はつらいよ」シリーズも「北の国から」シリーズも「Dr.コトー診療所」シリーズも「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズもことごとく見ていない僕からするとじっくりドラマで見るのはほとんど初めてで、これまではサントリーの果実酒のCMでの「君みたいなお酒です」シリーズが一番印象的な存在でした


おとなしそうな風貌とは裏腹にかつてはあの伝説の歌手・尾崎豊の親友で、酔っ払ってケンカしてあの尾崎豊をゴミ捨て場に捨ててきたなどという「武勇伝」も持つ俳優ですが、やっぱり「芯の強さ」があるのはこのドラマを見ても感じました。単に「思慮深い」だけのキャラじゃあれだけ存在感を放つことはできないですよね。


社長の桂一郎を演じた及川光博は最近の傾向からこのドラマでも「道化」を演じるのかと思いましたが、
これも最後は良そうに反して強い「信念」を持ったキャラクターで良かったですね


そしてその父を演じる会長の譲原三郎
演じる岸部一徳は「再生の町」でも「再建を託す側」の役でしたね
このような立ち居地がとても「絵になる」役者になりました
やっぱり雰囲気ありますもんね
「日本が元気だった」頃はこの方がバンドのベーシストをやっていたなんて今じゃ面影ないですよねぇ


そして主人公でもある矢作篤志
自分も同じ営業・ビジネスパーソンとして生きていることもありどうしても気になる存在でした
やり手の営業部長だったが業績悪化でポストを失い再建戦略室のリーダーに会長から任命された流れ
全体を通してみると現実離れしたスーパーマンとして描かれることもなく「人間的」な人物でしたね
失敗もあれば求心力も絶対的なものでもない
倒産危機を一時的に凌げたとは言え迫田の「自滅」が大きかった
方針がブレたり結構「不完全な」ヒーローでしたね


再建戦略室メンバー内で一番「クセ」の強そうな五十嵐(斎藤歩)の心が一度離れたものの、
彼が唐突に戻ってきた経緯もちょっと掘り下げ不足に思えました
妻との関係修復も曖昧なままで終わり、翔一とのその後も不明なまま


譲原会長とのやり取りも結局会長に主導権を握られっぱなしで、
「手の平の上」で翻弄されていた感が否めません


最後のライシェ社長とのやり取りでも提携話を合意させるシーンは描かれず、
工場で現地労働者達へのメッセージも通訳を挟みながらで間延びしてしまった
どうも最後までカッコ良く決まるシーンがないまま終わってしまった感がありますね


矢作を「スーパーマン」に描かず「ただの人間」と描くことにリアリティを求めたのかもしれません
確かに交渉術など一角でない部分も描かれましたが、
3話通してみるとやっぱり仕事人としても父親としてもいろいろ「不完全な」部分のあるキャラクターでしたね


どうしても主人公の立場になる人物には「何か特別な力があるんだろう」というフィルターを通して見てしまいがちですが、
実際はそう簡単に「奇跡」は起きないですからね
「奇跡」など生涯で一度も遭遇しない事の方がほとんどじゃないでしょうか


話数や尺の問題もあったと思うけど、
3話の何もかも唐突な展開で感想としては複雑なものになってしまいます
でも今後もNHKには社会派ドラマをどんどん作ってほしいと思うし、
今後も期待したいと思います
そして昭和を支えてくださった方々への感謝の気持ちも大切にしていきたいと思います


今の日本の製造業が抱えている大きなテーマを扱ったという部分は良かったと思います
日本と中国の複雑な関係も透けて見える内容でもありました


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